2010年04月
2010年04月30日
アレルゲン除去その2≪アレルギー検査と食物アレルギー≫
◎アレルギー検査で食物アレルギーはわかる?
保育園や幼稚園などから、「食物アレルギーの検査をしてもらって下さい。」という依頼がよくありますが、食物アレルギーの診断は非常に難しいものです。
なぜなら、検査値(IgE値)が高くてもアレルギー症状が出ない子もいますし、逆に、検査値が低くてもアレルギー症状が出る子もいます。
食物アレルギーは、IgE値だけが原因ではありません。
胃腸の消化能力、胃腸粘膜の透過性、ロイコトリエン、インターフェロン、インターロイキンなどの「ケミカルメディエーター」と呼ばれる、アレルギーに関与する物質など、複雑な要素がいくつも絡み合って症状が出てきます。
また、「RAST検査値イコール、その症状の原因アレルギーと言えないのではないか!」、「RAST検査で食物アレルギーとされた子供が、これとは無関係でないか!」といった報告がなされています
例えば、RAST検査の結果、牛乳にアレルギーがあると診断された子供たちに、偽の牛乳と本物の牛乳とを飲ませた時、検査値の高い子供たち全員に、湿疹や胃腸の異常などの症状が出たかというと、そうではありません。
これは、牛乳以外に原因があるのではないかと考えられ、必ずしも検査値が高いからといって、その食べ物を制限しなければならないとはいえないところがあります。
欧米では、実際に食べてみてアレルギーの有無を調べる検査が主流です。(食物負荷試験)
◎食物アレルギーの診断
一般的には、問診 ⇒ 皮膚テスト・血液検査 ⇒ 食物除去試験 ⇒ 食物負荷試験の順に行いアレルゲンを確定します。
◎食物除去試験
問診にて食物アレルゲンがある程度判断できたら、その食べ物を1~2週間ほど食べないで症状の変化を日記に記録します。その記録からアレルゲンを確定する。
◎食物負荷試験
アレルゲンと考えられる食べ物を摂取して、何らかの症状が現れるかチェックするものです。
食物アレルギーの検査では非常に重要な検査ですが、重篤な症状が現れる危険があるので、原則として専門の医師のもと外来又は入院して行います。
しかし、保険診療でコストの算定が困難で人手やノウハウがないため、ほとんどの病院・医院では行われていません。
結果、一番肝心な試験を行うことなくアレルゲンを特定し、アレルゲン除去を行っていることがほとんどです。
2010年04月28日
アレルゲン除去その1≪アレルギー検査≫
既に、ご存知の方がいらっしゃると思いますが、一般的なアレルギー検査「即時型アレルギー反応(Ⅰ型アレルギー反応)」についてお話します。
◎皮膚テスト
①スクラッチテスト(掻爬法)、プリックテスト(単刺法)
抗原抽出液(アレルゲンエキス)を皮膚表面に滴下し、針先で皮膚に出血しない程度の擦り傷をつけ、15~20分後に反応を調べる検査です。
真皮上層の肥満細胞表面に特異的IgE抗体が存在すれば、滴下した抗原と反応し、肥満細胞内のヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され局所が赤く腫れます。
②皮内反応テスト
少量のアレルゲンエキスを皮内に注射する方法です。感度は高いが、アナフィラキシーを誘発することがあるので注意が必要です。
③パッチテスト(遅延型アレルギー反応の検査)
パッチテスト用絆創膏にアレルゲンをのせ、皮膚表面に貼り付け48時間後の様子を調べる検査です。
◎血液検査
①RIST(リスト)検査
血清中の総IgEを計測する方法です。
Ⅰ型アレルギーの重症度の大体の目安になります。その人の体全体で、どのくらい強くⅠ型アレルギーの反応が起こっているかを調べる検査です。
②RAST(ラスト)検査
特異的IgE抗体値を計測する方法です。
卵白、牛乳、ダニなどの特定のたんぱく質(抗原)と結合するIgE抗体が、どれくらいあるかを調べる検査です。
一般的に、アレルギーの血液検査とはRAST検査をいいます。スコアーは0~6で表示されます。花粉症のような典型的なⅠ型アレルギーであれば確定しやすいですが、Ⅰ型以外も存在するアトピー性皮膚炎では、スコアー(検査値)のみでは原因抗原と疑っても確定がしにくいです。
③好酸球試験
IgE抗体は、アレルギーの長期的動向の目安としても使えますが、現在の症状が急性期なのか、どうかを調べるのは好酸球試験です。
末梢血の好酸球数を測る方法と、血清ECP値を測る方法があります。また、喘息の場合は、啖(たん)の中の好酸球を調べる検査もあります。
好酸球の増加は、アレルギー性の炎症が増悪している状態と考えられているためです。
◎除去・負荷テスト
通常、最低2週間(できれば1ケ月)、推定アレルゲン及び、それを含む食品等の除去と負荷によって行ないます。アナフィラキシーショックの経験者は、負荷は医療機関でおこなうことが望ましいです。
RAST検査の数値が高く、食べたり、触れたりするとすぐに症状が現れる場合は明確ですが、RAST検査で陽性であっても、食べて症状が現れない場合や、逆に、RAST検査で陰性であっても、アレルゲンになっていることがあるため、推定アレルゲンの除去・負荷テストは必要です。
これは、小児ではアレルゲンとなる食品等の除去が、治療上極めて有効なためです。また、不必要な除去をしない、労力軽減のためにも有効です。